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「で、珍しく飲みに誘ってきたと思ったら、織季ちゃん振った挙げ句キスして帰ったって?マジで言ってんの?基?」
向かい合わせのテーブルの先で目を見開いているのは、二木翔也。同期入社以来の仲だ。
「振ったのにキスしたってさぁ……」
俺は黙ってイカの塩辛に箸を伸ばした。
「普通に振るよりタチ悪いって」
「重々承知してるよ。でもあの泣き顔見たら止められなかった」
「はいはい。さすがモテる男はやることが違うよなぁ。それにしても、衝動に身を任せるなんてお前らしくないじゃん?やっと本気になれる子見つけたと思ったんだけどな~」
「翔也、お前には言われたくない」
「すみませんね」
口を尖らせると、翔也はジョッキを煽った。
「俺は求められるからその都度与えてるだけだ。お前は逆だろ?」
「そうだよ。一人寝が寂しいんだよ」
「困ったもんだよな、お互い」
「ハッ」と自嘲気味の乾いた笑いが重なった。
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