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「話戻すけど、織季ちゃんどうするんだよ?あんないい子振るなんて」
「どうするったって、仕事で絡むことあるし今まで通り接するしかないだろ」
「基は今まで通りにできるかもしれないけどさ、振って泣かせてキスした相手だよ?」
「……ニ回も言うなよ」
「だって事実だろ。織季ちゃんはたぶん今まで通りの態度は厳しいんじゃねえの?」
それには答えずに、ジョッキに僅かに残していたビールを流し込んだ。
「悪い、煙草吸ってくる」
「ここで吸えば?」
「いや、外の空気吸いたいから」
「あ、そ。ごゆっくり」
テーブルに片手をついてから立ち上がり、カラカラと扉を開けた。
店先の暖簾から少し離れた場所に立って、ライターを灯した。少し風があるせいか、火が流されてゆらりと揺らめく。片手を翳して、風を避けて着火した。
フーッと紫煙を燻らせながら、通りの往来に何気無く目線を移す。
待ち合わせをしていたのか、手を振りながら駆けていく女性が目に入った。桧山よりニ、三歳上くらいに見えた。駆け寄った先にいるのは彼氏だろうか。
その光景を眺めてる内に、煙は儚くも夜の風に溶けて消えていった。
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