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「私もオーバーテクノロジーとやらを解明して何がしたかったのかはわからない。戦争がしたいのか、人類救済を詠うのか、単なる好奇心なのか。
私はそれが知りたい。それが人格移し……甚平が死ぬ結果にどうして繋がるのか。そこに正当性があったのか。
そのために協力してほしい。」
嘘はない。私が得られる限りの情報では真実を語っている。
ああ、どうしてこんなにも人を疑うようになってしまったのだろう。
人の本心、その絶対を知れる超能力を持っても人は疑うものだと染み付いている。いつ根付いた感覚なのか分からない。
亜季が寄せてくれた信頼に誠実で返そう。誠実でその感覚を振り払おう。
「私は……」
一つ一つを丁寧に説明していった。今おかれている状況、殺害予告、人格移しから隠れていること。
『やっぱり脅されていたか……でも』
「おかしくない?」
亜季が疑問を呈した。
「人格移しに思考転写は効かないかんだよね。」
「正確には肉体を見ていないから出来ない。会ってみれば効くかもしれないけど。」
「でも晴香に人格移しが掛かったときは効かなかった。そうでしょ?」
「そうだけど。」
「人格移しは人を操る力のはず。喋ろうと思わなければ声は出ない。
口で言ったんだよね?
『思考転写なんて死ねば良い』って。」
「私が思考転写だと知らなければ言わないってこと……!」
「人格移しは柊という苗字が思考転写だと知っている。あくまで推測程度かもしれない。確信はないかもしれない。
こちらに人格移しの情報が少ないのが不安を掻き立てるな。」
「……人格移しの人格……甚平さん? がいるんでしょ。その人格にそちらの能力や人物像を聞けないの?」
「残念ながら、ね。私が甚平と出会ったときは瀕死の状態だったんだよ。何者かに体を貫かれていた。激痛で揺らぐ意識の中、甚平は通りかかった私に人格移しを使った。
私も元から耐性があった訳じゃない。人格移し会えば気を失ったように操られ、終わったときには死の痛みに会話できる状態ではなかった。
回復した時記憶が薄れていた。まあ、私の人格と混ざって、記憶も曖昧になってたのよね。だから……ない。」
「ごめん……」
辛いことを語らせてしまった。死の痛みが人格移しを受け亜季に体の主導権が戻った際、そのまま残っていたのかもしれない。
死の痛み、その二度目の恐怖は私の想像を越える、そうやって軽々しく扱うのも失礼かもしれない。
『やべ……そうだよね戻さないと』
気を取り直した。
「それで話しを戻すと、今私達に取れる選択は二つ。」
「二つもあるの!?」
「視野狭すぎ。一つはもちろん、隠れ続けること。正直悪手だろうよ。向こうの機嫌次第で命を狙われるような危ない賭けしない方が良い。」
「機嫌次第?」
「死ねば良いって、感情的な言葉でしょ。今は我慢してるけど、いずれ爆発する。人格移しを見つけない限り向こうの機嫌はわからない。」
不敵な笑みを浮かべて、
「だから、こちらから仕掛ける。」
「いや、それこそ人格移しの正体を突き止めないと、仕掛けるなんて出来ないんじゃないの?」
「もう一度言うけど、花味覚しになんで人格移しである甚平がいたと思う?」
「……人格移し、その一家が主導だった?」
「甚平は探偵で捜査のため潜入していた可能性もあるけど……その辺の記憶がないからな。諦めて。」
「花味覚しの証拠を見つければ脅しになると。」
「逆効果になるかもしれない。でも花味覚しの証拠は地球外文明の証明でもある。世紀の大発見だよ……売れるんだよ。
どこであっても法外な金が手に入る。金があればなんでもできるでしょ。」
こいつ、金に目が眩んでいないか?
でも、その案はありだと思う。
人格移しが、もし思考転写達が花味覚しの首謀者だと勘違いしていたなら……それで思考転写を殺したいと発言したのかもしれない。ならば、その証拠を提示出来れば和解も出来る。
例え、人格移しの神経を逆撫でする結果になっても、
「金さえあればどうにかなる。」
「その通り、一般人ごとき金でどうにかなる。」
「そっか……金か……って違っぁぁうッ!」
「ノリツッコミだ……と……!」
「うるせえなあ。」
ため息をついて、
「で、花味覚しの証拠はどこにあんの。当てはあるんでしょ。」
「お、ノリ気になったか。」
「そりゃね。何事も先手を打つべきだし。」
「思考転写の人生経験ってやつ?」
「もちろん。」
人間関係において、傷の浅いうちに一言声をかけるだけで大き変わってくる。自発的に仲直りしようと動き始める。
早めの対処は、後々効いてくる。
「で、当てはあるんでしょ?」
「もちろん! この町には五つの立ち位置禁止の場所がある。その中で土地の管理者が事情を知らないエリアがある。そこが花味覚しの実験場はず。」
「その根拠は?」
「私が花味覚しに遭った時、少なくとも地下だった。天井が暗くて見えないほど広い空間だったし、夏なのに涼しく感じたし、市内巡ってもそれらしい巨大施設はなかった。」
「商いしながら市内巡っている余裕があるもんなの?」
「何のために学校休んでると思ったの?」
「学校行けや!」
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