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「どうするの? 私は資料整理とか得意じゃないし、読むのも遅いから、この紙束がから有益な情報を探すのはだいぶ骨が折れるんだけど。」
「正直、次に移るべき……ここが物置で、研究結果をまとめたレポートも保管してそうだけど……パッと見た感じ、妄想文しか無さそうだし。」
まあ、確かに考察と言いがたい、妄想と想像を膨らませた文書である。部屋を見渡す、紙束がすべてこれと同じだと考えると狂気を感じる。それだけ嬉しいかったのだろうけどやりすぎでは。
「帰ろう。研究費は手に入って新しく場所を得られたんだろう。」
扉を少し開けたままにしていた。
廊下を数歩行って突然止まった亜季は、
「ここも扉だね。」
壁を明かりでくるりと回す。今回はそれほど力を入れずに開いた。
「良く分かったね。」
「砂ぼこりがこの壁にはほとんどついていなかったし、床も似たような状態だった。」
「……人が出入りしてる?」
静かに頷いた。
「なんで来たとき言わなかったの?」
「私の予想だと、花味覚しは完全に停止した実験。なら人が出入りしてるのはおかしいと思っただけ。
人格移しが花味覚しを再開して思考転写を狙っているかもしれない。それで、過去の資料漁っている。
神社の単なる物置だと思ったからスルーした。」
たまに亜季は人に聞かせる話し方ではなく、頭の中でも考えをそのまま話すことがある。多重人格で、脳内で会話している時と口で話している時が曖昧になるのだろう。
中に入ると短い階段が蛇腹折りに続いていた。幾つかの踊り場には扉があった。どれもしっかりと鍵がかかってあったため、諦めてて明かりの差し込んでいる上を目指した。
「嘘でしょ……!」
広間の中央のでっかい架台にでっかい望遠鏡。荘厳な大きさに欠点などないように思えた。
「口径二メートル……はないな、1,5くらいか、あり得ない……なんでこんなところに。立地が悪すぎる。こんなところに建てないで。最も別の場所に移設しよう。それがいい……」
「目ぇ輝かせているところ申し訳ないんだけど、こっちが本題。」
巨大な望遠鏡に繋いだパソコンの机、その隣にあったノートを取って、ヒラヒラを振っていた。でっかい望遠鏡に目を奪われていたが、二百mmほどの望遠鏡もあった。
「読んで。」
読み終わったようで、手渡して……押し付けてきた。亜季は頭を抱えた。
ノートは新品で各ページに日にちが振ってあるので日記だろう。
今日は人格移しの効果テスト。一回の内、二人が限界のようだ。少ないよな、これが限界なのかな……駄目だ駄目だ、この程度で限界を感じていたら、あの人に嫌われちゃう。何してるのかな。他の男と仲良くお出かけとかしてないよな……嫉妬……嫉妬して欲しいんだ。女はそういうとこあるし……直接聞くかな……その方が嫌われるか……
違う違う、あの人の事を書くとノートがすぐ無くなるから、能力だけにしようと新しくしたんじゃないか。
人格移しはもう少しいける気がする。こうなんか回路が切断している、速度制限のかかったスマホような気がする。気がするだけなんだよなぁ。
他の連中も順調に能力幅と調整が上手くいっている。そろそろあの計画が実行出来そうだ。
私は亜季の方を見た。これに有益な情報が載っているんですか?
『次のページ……まさかな……』
今日は彗星が見れました。美しい尾を引いていました。我が君は誰と見ているのでしょうか? 男でしょうか? そんな分けないよね? 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
ページをめくった。
そういえば、一人で、一人で、一人で彗星を観賞していました。
彗星に宇宙人がいました。
「嘘だ……」
宇宙人に人格移しが成功しました。
「嘘だぁああああっ!?」
「おい……! 誰かいるのか?」
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