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ぬるま湯のような心地良さで、微風が腹を、畳に投げ出した手足を、撫ぜるようにして吹き抜けていく。
固く閉ざされたかと思われた瞼は意外な程ゆらりと簡単に開いて、雪見障子から僅かにそそぐ、柔らかな日差しが息を吹き返した瞳になだれ込んだ。
――死んだのかもしれない。杉沼さんが封印しているはずのバケモノ、それを見てしまった。
俊彦はヤツらについて、なんと言っていたか。人間の目には映らない摩訶不思議な現象。じゃあカメラを通した目ならば? 町田が壊れてしまったのは1年ほど前。彼は去年の祭りで写真を撮っていた。その最中にソレに遭遇したのだったら? 神社での「とるな」とは「撮るな」という警告だったのか。
そもそも、スマホを介して祭りに参加することを提案したのは誰だったか。
俊彦からの話を知っている凛子。祖母から逃げられなかった凛子。翔太を恨んでいた凛子。
――ああ、嵌められた。
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