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翔太の祖母が亡くなってはや1年が過ぎようとしている。最期は老衰という呆気ないものだったらしい。
認知症が進行したことで、祖母は変貌を遂げた。気に入らないことが一つでもあれば暴れ、喚き散らし、家人の肌に青痣を作った。しかし、突然正気に戻ったりしては、自らの行いを恥じて塞ぎ込んだりする。子供と大人の間を行ったり来たりしながら、日々を浪費して生きているようでとても見ていられなかった。「殺してくれ」と頼むこともあれば、「私を殺す気か!」と、怒鳴りつけたりもする。そんな風に荒れた家が嫌で翔太は遠くの大学を目指し、家を飛び出したのだった。
村に残された家族は相当の思いをしたらしい。時々かかってくる佳美からの愚痴の電話は酷いときで1時間ほど続くこともあった。
そして、また祖母本人も苦しんだ事に変わりはない。今まで積み上げてきた全てが失われていく感覚。ふと正気に戻った時の背中が物語っていた。
町田も祖母と同じように自分が自分で無くなっていく日々に悩むのかもしれない。ふと思った。
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