帰省中

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ぶぅぅぅん、ぶぅぅぅんと音を立てて夜が覆いかぶさった。 なにが起きたのか、提灯が消されてからあまりにも一瞬の出来事で、翔太には理解することが出来なかった。 太鼓の音ではない、独特の重厚さ。無数の響きが共振しあってひとつの楽曲を形成する。耳の内側に音源があるかのような錯覚。 ――違う。この世のものじゃない。 直感的に分かった。翔太の部屋と故郷では数百キロ以上も離れているはずだ。それなのに押し寄せる圧倒的な数の暴力。視界を覆い尽くした黒い嵐。いつか、テレビ画面に映しだされた、アフリカの蝗のようになって地面を食い荒らしていく。 ヒュウヒュウと、か細い笛の音がぐっと遠ざかっていく。絶え間なく、虫の群れが翔太の端末だけを世界から切り離そうとするように、羽音を響かせ迫り来る。 不味い。 背骨に悪寒が走った。パソコンの電源を切ってしまおうかとも思ったが、もう遅い。 耳の奥に轟音がこびりつき、視界がだんだん定まらなくなっていく。完全に覆い隠されてしまった真っ黒な画面の後を追うかのように、翔太の眼前に広がる世界もブラックアウトした。
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