冷たい彼

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冷たい彼

彼の目は限りなく人に近いのに  ビー玉を思い出させる その瞳からは嬉しくても悲しくても涙に似た液体が流れる 怒りもすれば 笑いもする  彼の唇はきれいな赤だけど  少し赤すぎる  不自然な色合いのその唇から とても流暢な言葉を紡ぎ出す 彼の体は柔らかい  まるで人間みたいな優しさで 私のことを抱きしめる 気持ちも体もまるごと包んでくれる でも 彼のどこに触れても とても 冷たい 今では体温のあるアンドロイドは当たり前 でも私は 冷たい彼が好き 小さなころから一緒にいたし 私が手放したら彼の行き先もわかるから 彼は冷たい でも暖かい
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