第1話 メイドの告白と教え

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「まあ! さすがソフィだわ!」  殿下と婚約破棄をして、新しい素敵な恋。 「どんな素敵な殿方が現れてくれるのかしら。とても待ち遠しいわ」  頭の中に浮かぶのは、この間読み終えたばかりのロマンス小説の男主人公。凛々しくも優しい瞳、逞しい身体、一途に想い続ける意志の強さ、そして愛の言葉を紡ぐ色気のあるくちびる…。私の目の前にも、きっといつかそんな素敵な殿方が現れてくれるわよね。 「現実に目をお向けくださいませ」  ソフィのピシャリと言い放つ言葉に、私は妄想の世界から目を覚ます。 「ソフィ?」 「お嬢様、何もせずにイケメンが降って湧いてくるのは物語の中だけなのです」  そうしてソフィは語る。現実では、イケメンは自然発生などしない、と。さらに彼女は思いを込めて語る。フリーのイケメンは希少種である、と。性格も良く、財力もある、そんなフリーイケメンは、もはや絶滅危惧種だ、と。 「な、なんてこと…」  素敵な恋の出会いに想いを馳せてまだたったの数分。  私は、絶望した。
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