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お父様に連れられて、私たちはまず陛下の元へご挨拶に向かった。この楽しい気持ちにイーサン殿下の顔を見て水が差されるのは頂けないが、仕方ない。
「国の太陽にご挨拶を申し上げます」
お父様の挨拶に合わせて、私も令嬢らしくしっかりとお辞儀をした。
「ナイトベル公爵か…変わりないか?」
「えぇ、お陰様で。公爵家は皆、平和な日々を過ごせております」
「そうか…」
とてもいい笑顔で答えるお父様に、陛下は一瞬気まずそうな顔を見せる。すぐに元のキリリとした威厳ある表情に戻った後、陛下はお母様にお声を掛けて、次に私に目を向けた。
「シャロン。今日も麗しいな。元気そうでなにより」
「お気遣い頂きまして、感謝を申し上げます」
この場にイーサン殿下のお姿がない事に疑問を覚えるが、とりあえず陛下に向けて丁寧にカーテシーをする。
「…色々あったが、私は個人的にお前を気に入っている。今後、何か不便があれば私に言いなさい」
私は陛下のお言葉に耳を疑った。この国で最も尊いお方が、たかが公爵令嬢である私のために、お心を砕いてくださると言うのだ。驚くなと言うほうが無理だろう。
「…シャロン、返事をしなさい」
「あっ……そのような勿体なきお言葉、最大の感謝を申し上げると共に深く感激しております!」
お父様に注意を受け我に返った私は慌てて深く頭を下げる。すると、普段は厳格な陛下には珍しく優しい声で「よい。楽にするがいい」と仰られた。
「…ところで、夫人と令嬢にはまだ会わせたことはないな? セドリック、来なさい」
陛下が後ろの少年に目を向け呼んだ。気を取り直して、私もその少年に目を向ける。
「はい、陛下」
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