第10話(2) 第二王子との挨拶

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 やって来たのは、まるでイーサン殿下がそのまま幼くなったような少年だった。  彼との違いは蜂蜜のような輝かしい金髪ではなく、ぐっと白に近いプラチナブロンドだったこと。この国には珍しい色彩だ。 「公爵夫人、令嬢、紹介しよう。我が息子の第二王子、セドリックだ。こちらはナイトベル公爵夫人と公爵令嬢だ。セドリック、挨拶を」 「お初にお目にかかります。第二王子、セドリック・アン・サンロードです」  少年は丁寧な挨拶をした後、じっと私を見つめてきた。イーサン殿下と同じ澄んだ碧眼…なのに、与える印象は全然違う。  イーサン殿下が『無垢』ならば、セドリック殿下の瞳には『空虚』。何か濁ったものを抱えたその目で私の姿を映す。思わず身震いした。 「セドリック。初対面でそのように見つめては、令嬢に嫌われるぞ」  陛下の厳しいお声が飛んできたことで、セドリック殿下はその愛らしい顔をニコリとさせて私に笑みを向けてきた。 「申し訳ありません。思わず見惚れるほどの美しい方でしたので」  そう答えられたセドリック殿下の瞳には、先程垣間見た濁りはない。…気のせいかしら。  お母様と私はセドリック殿下に挨拶を返しいくつかのお言葉を交わした後、この場を後にした。
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