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離れで待っていたソフィと合流し、私たちの指定席へと向かう途中、私は我慢出来ずにお父様に尋ねた。
「お父様。『アン』と言うことは、セドリック殿下は…」
『アン』というミドルネームは特別なものだ。それこそ、王太子であるイーサン殿下も賜われないほどに。イーサン殿下は側妃様の御子なのだ。『アン』を賜われる王子は特別。なぜなら…。
「そうだ。正妃様の御子だ」
正妃様。今は亡き小王国の姫として生を受け、この国に嫁いでくるも虚弱体質から公の場で目にすることの無かった幻の正妃様。第二王子の存在は知っていたけれど…第二王子もまた、まだ8歳と幼いという理由もあるだろうが公の場に姿を現すことはなかった。
「…本日のような日に、なぜ王太子であるイーサン殿下ではなくセドリック殿下が…?」
「そういうことだ」
そういうことって…答えになっていない答えに、私はもしかしてと思い、お父様へ更に質問する。
「もしかして、それって…」
「シャロン」
お父様は突然足を止めてこちらを振り返る。そのお顔は真剣で、なんとなく不用意に口を開いてはいけない雰囲気に私は言いかけた質問を飲み込んだ。
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