第11話(1) 女(男)神が微笑むのは…

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第11話(1) 女(男)神が微笑むのは…

「ルーカス、今日もいい試合を行おう」  選手控え室で試合の準備をしていると、後ろからそう声をかけてきた男がいた。振り返ると、やはりと言うか、整った顔に爽やかな笑顔を浮かべるよく知る男が立っていた。 「なんだ? 優勝宣言のつもりか?」 「もちろんやるからには優勝を目指すが、違う。…それに試合の結果がどうなるかは誰にも分からないさ」  目の前のエリックは強気な笑みで俺を見たあと、チラリと控え室の隅に目をやった。 「…だな」  俺もそちらに目を向けて思わず笑ってしまう。 「俺だって優勝を目指しているんだがなぁ。優勝の女神はどうすれば微笑んでくれるかな」  隅で試合準備をするレオンを見て、俺は小さく息を吐いた。  今年入学してきたレオンは、平民でありながら貴族でも驚くほどの魔力量を保持し、さらには磨けばより光る剣技センスの持ち主。所謂、天才にカテゴリーされる人材だ。だからこそ、あの男は貴族のプライドを傷付け、妬まれ、煙たがられている。  俺は実力主義だ。結果が出せない者に価値を見出せない。きっと、今日の大会では一波乱起きるだろう。  レオンには今日、その実力を周りに見せつけて有無を言わせず黙らせてやって欲しいものだ。…俺を含めてな。そう思い、ふと不思議と楽しみにしている自身に気が付いた。  なんだ? 俺はもうレオンを認めていたというのか? まさかな。
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