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何やら楽しげにエリックと会話を交わしているシモン先輩を眺めながらそんな事を考えていると、ふとシモン先輩と目が合った。
「ルーカス、最近は妹によくしてくれていると聞いたよ。ありがとう」
「いえ、こちらこそ」
にこりと微笑むシモン先輩に慌てて会釈する。
朗らかで親しみやすいシモン先輩と厳しい印象で隙のないシャロン嬢。姿形は似ているがこんなにも正反対な兄妹がいるとは。ずっとそんな事を思っていたが、案外、中身の性格を入れ替えた方が見た目に合うのでは? なんて考えてしまう今日この頃。
実際、シモン先輩は自分にも他人にも厳しいお人だし隙なんてものは絶対に見せない。シャロン嬢は話してみると親しみやすくお可愛らしいお人柄だった。接してみないと、分からないものだよなぁ。
「今日の試合、頑張って。誰が優勝するのか楽しみに観戦させて貰うよ」
そう男すらも魅了しそうな笑顔でシモン先輩は俺に励みの言葉をかける。…ほらな。油断してはいけないお方なんだ、この人は。
「はい、精一杯頑張ります…!」
その期待に応えたいと思ってしまう自分がいる。まさか勝利の女神ならぬ、勝利の男神が微笑んでくれたというのだろうか。
頬を染めながらも頷く俺を見て、シモン先輩は笑顔で頷き返したあと室内にぐるりと視線を漂わせた。
「あ、レオン!」
そして、隅で息を潜めていたレオンを見つけては、その者の元へと近付くシモン先輩。当然ながら、周りの選手たちに大きな騒めきが起こった。
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