第11話(1) 女(男)神が微笑むのは…

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「……約束、しましたから」  レオンは小さくそう返すと、シモン先輩に会釈しそそくさとこの部屋を後にしようとする。レオンが俺たちの隣を通り過ぎる時、エリックがレオンに言った。 「レオン、絶対に譲らないからな」  『優勝を』と、続くのか? なんて考えていると、レオンが足を止めてこちらを振り返る。 「俺だって、譲りません」  普段無口で遠慮がちなレオンにしては珍しく、やけにハッキリとした物言い。 「先輩には、絶対に負けたくない。奇跡を起こすのは俺です」  確かな意志が揺らめいている、全てを焼き尽くしてしまいそうに輝く金の瞳。こいつの眼、こんなに綺麗だったのか…。  レオンは再び会釈をして、今度こそ部屋を出て行った。 「…お前ら、喧嘩してるのか?」 「……違う。けど…悪い、俺ももう行く」  エリックも部屋を出て行って、残された俺の頭には、訳が分からないという疑問。 「はははっ、青春だねぇ」  何かを知っているらしいシモン先輩だけが、楽しそうに笑っていた。
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