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第11話(2) ディアナ姫の正体
「勝者、ルーカス・ヨルク!」
その判決を聞き、俺は対戦相手の喉元から剣先を外した。試合は終盤を迎え、興奮する観客もいることから闘技場は異様な盛り上がりを見せていた。俺は今の試合に勝った事で4位以内に入ることが確定した。
控え室に戻り、水分補給をする。優勝まで、あと2勝…。気合いを入れ直して、会場へと戻る。
俺が会場に足を踏み入れると、先程まで大盛り上がりを見せていたはずの会場は、変わらず騒がしいがザワザワとざわめいていた。何とも言い表せない異様な雰囲気だけを肌で感じる。
「……なんだ…?」
胸騒ぎ。少し目を離した隙に何があったんだ? 状況が理解出来ない事態に不安感が広がる。
「………しょ、勝者、レオン・タラン!」
戸惑う声色で審判が叫ぶ。
俺は皆の視線を集める試合会場の中央に目を向けた。そこには対戦相手を息ひとつ切らさずに見下ろすレオンと、膝をつき肩を大きく揺らして呼吸をしている騎士学部の生徒。
レオンの対戦相手…去年の5位じゃないか! そうか、平民のレオンが勝ったから…だから皆は驚いて…。
「…優勝するには、まずはレオンを、かぁ…」
心底、アイツと戦いたくはない。だが、何故だ。身体中から湧き出るこの気持ち、震える身体、自然と溢れる笑み。…これが武者震いというやつなのか。
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