第11話(2) ディアナ姫の正体

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 レオンとの試合時間はすぐに来た。お互い並んで試合会場の中央に向かって歩いていく。 「…何がお前をそこまで掻き立てるんだ?」 「……身分も弁えず、ディアナ姫に俺を知って貰うためです」  凛々しい表情で前を見据えたまま答えるレオン。 「だから『ディアナ姫』って一体……あ」  ディアナ姫…月女神、シモン先輩、不機嫌なエリック……まさか。 「シャロン、嬢…?」  レオンの金眼がこちらに向いた。 「一度は諦めましたが、俺は最後まで足掻いてみようと思います」  今日がその足掻きの第一歩なんです。と、強気な顔で笑うレオンがとても眩しく映った。まさか、レオンを突き動かすものがシャロン嬢だったとは。 「お前ね…平民の身でその道は、ここの優勝への道よりも茨の道だぞ」  俺がそう言うと、頼もしい後輩は「例え茨で身体中が傷付いたとしても、後悔するよりはいいでしょう」と簡単に言ってのけるので、試合前なのに笑ってしまった。  まぁ、試合開始から10分。俺はレオンに討ち取られたのだけれど。 「10分間、胸を貸してやったよしみだ。お前の健闘を祈る!」 「ありがとうございます」  コテンパンに負けて大の字で寝転ぶ俺に、青々とした空を背負ったレオンは、困ったような笑顔で手を差し伸べてきたのだった。
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