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第11話(3) ひとりの平民の男
「…いよいよだな」
隣に並び立つレオンにだけ聞こえるように、俺は言う。
「はい。今、この場だけは、エリック先輩と対等だと思っています」
「……俺はシャロンが好きだ」
レオンに目を向けて言った。何故こんな事を口走ったのか、牽制のつもりなのか、俺にもよくわからない。レオンは顔色ひとつ変えずに「知っています」と返す。
「……先輩が当たり前に呼ぶあの方の名前も、俺には許されない」
切なそうに呟いた後、レオンも俺を見た。
「…先輩が、羨ましい」
ぐっと噛み締めた苦しそうな表情で、金の目が俺の姿を映す。その瞳には、羨望、嫉妬そして野望。黄金の深淵を見た気分になり、俺はその瞳から目を離せず身震いすらしてしまいそうになる。
「きっと俺は、世界一強欲な男なんです」
固まる俺に構わずレオンは続ける。
「俺は将来、何年、何十年かかってでも爵位を手に入れてみせます。どんな方法であろうと、必ず」
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