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平民のレオンが、爵位を…。
考えられる方法は、ひとつ。戦争で功績をあげれば、一代限りの騎士爵位が…いや、さらに国を揺るがすほどの功績をあげれば? それこそ、敵国を失墜させるほどの…。
実際に、俺の生家エデルナンド侯爵家は先祖が戦争で挙げた大きな功績で承った爵位だ。まさか、レオン、お前…。
「シャロンの為に、どこかの国を滅ぼし捧げるとでも?」
俺が半信半疑で尋ねると、レオンはその整った顔に美しく笑みを携えた。美しくも、危うい。そして人を狂わせそうな色気を含んで、レオンはただただ深く笑った。
背筋が凍る思いだった。何を戯れ言を、だなんて笑うことは出来なかった。レオンのこの眼は、本気。
審判の合図がかかり、俺たちは試合会場の中央に向かう。歩いている間は終始無言だったが、中央に立ちレオンと顔を見合わせると、唐突にレオンが言った。
「先輩、俺も彼女が好きです」
「……知ってる」
ふと、数ヶ月前の春先に俺が言った言葉を思い出す。
「憧れで済ませておけって、言ったのによ」
そう言って肩をすくめてクスリと笑うと、レオンも困ったように笑った。いつもよく見るレオンの笑顔だった。
「…無理でした。あの時すでに、手遅れだったみたいです」
俺たちは互いに複雑な感情を抱きながらも笑って、握手を交わした。
「泣いても笑っても、優勝は俺たちどちらかにひとりだ!」
「はい!」
審判が、試合開始の合図を出す。
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