第11話(4) 死に際の騎士

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第11話(4) 死に際の騎士

 模擬剣の擦れ合う音。もう何度、レオンとこうして鍔迫り合いをしたか分からない。言葉を交わすことなどなく、お互いがお互いの首を狙っている。  俺は手首を少し捻り、レオンの刃を受け流そうとした。これで少しは体勢を崩してくれればなんて思ったけれど、やはり相手は天才レオン。そう簡単にはいかないよな。  逆にレオンから反撃を喰らう。俺の僅かな隙を見逃さずに、すかさずそこに刃を振り下ろしてきたのだ。俺は両腕に魔力を流し込み、瞬時にレオンの刃を下から受け止めた。  金属製の甲高い音が鳴る。ギリギリと互いの刃を擦り合わせながら、俺は徐々に下からレオンの刃を押し上げていった。 「…くっ…」  レオンの苦しそうな声。歪む表情の中でも、その金の目を輝かせる執念のようなものが勢いを失うことはなかった。 「…レオ、ン! そんな力じゃ、俺は屈しないぞ!」  レオンは悔しそうに歯を噛み締めて、俺を力でねじ伏せられないことを悟ったのか、大きく後ろに一歩跳んで潔く後退した。  俺はすかさず追撃する。レオン目掛けて大きく横に模擬剣を振ればレオンは身体を捻らせて躱した。  おいおい、どういうことだよ。着地する前の空中滞在時を狙ったんだぞ。それを、躱すだなんて…!  驚きと戸惑いから俺の視線が固まる。その隙にレオンの姿が視界から外れた。  …しまった! 慌ててレオンの姿を目で追うが遅い。模擬剣を振り切った俺の正面はガラ空きで、目の前には鋭い眼光を放つレオンが獲物を仕留めるかのようにこちらに狙いを定めて模擬剣を振りかぶっていた。
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