83人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は身体中の魔力を総動員で正面に集める。俺だってレオンに負けたくない! …知っていたんだ。レオンがシャロンを見ていること。シャロンも、レオンを見ていること。
悔しいと思いながらも、俺は優越感に浸っていた。『平民のレオンに何ができる』。そんな事を心の奥底で思っていた事に、今更気が付いた。
レオンが模擬剣を振り下ろす。
あぁ、そうさ。俺は卑怯だったな。平民であるレオンを侮って、お前と対等にだなんて思いもしなかった。そんな俺を、レオン、お前は見透かしていたんだろう?
『今、この場だけは、エリック先輩と対等だと思っています』
恥ずかしく思った。
誇りとは、なんだ。騎士とは、なんだ? 平民を見下す貴族に嫌悪感を抱いていたはずなのに、どうやら俺も同じ穴の狢らしい。俺は、騎士ではなく貴族だったのだ。
「…今まで悪かったな」
俺の呟いた謝罪が聞こえたらしい。レオンの眉がピクリと動く。振り下ろされた刃は、もう目前にまで迫っていた。
「もうお前を侮らない」
俺は真っ直ぐにレオンを見つめた。なんとなく、レオンの口角が少し上がった気がした。瞬きひとつしない黄金と視線を交わしたまま、正面に集めていた俺の全魔力を模擬剣を握るこの腕に一気に流し込んだ。
昔、シモン先輩に聞いた魔力操作。秘かに練習していた俺は、更なる力を操れるようになっていた。
この一撃をもって、お前を討つ!
突きの構えでレオンを迎え撃つ。振り下ろされた刃に、俺の剣先が触れる。
ビシッと金属の軋む音がした。見れば、俺の突きを刃を返して受け止めたレオンの模擬剣にヒビが入っている。
ビシッ ビシッ ビシ
俺の勢いは止まらない。ひび割れは深くなっていき、レオンの模擬剣は遂に無惨に砕けてしまった。
突きを遮るものが無くなり軽くなる。俺はそのまま、レオン目掛けて腕を押し抜いた。
最初のコメントを投稿しよう!