第2話(1) 嵐の前のとある午後1

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「この学芸都市での生活は2ヶ月半ってところかな?どう、少しは慣れたかい?」  優しく細められた星空の視線に、まだ少しあどけなさの残るレオンの顔がみるみるうちに赤く染まりゆく。 「あ、の…まだ、そんなには慣れていません。その、学芸都市には貴族の方々ばかりいらっしゃって、それにノートを買いにスクールタウンを走り回っても貴族の方向けの、高級店ばかりで入れる店はなく…戸惑ってばかりです」 「…そうか、レオンは平民出身なんだね」 「あ…す、すみません…」 「どうして謝るの? 平民からこの王立学園に入学することは、とても凄いことなんだよ。君のこれまでの努力を賞賛するよ! エリック、確かにレオンの顔を覚えておいて損はないようだね。将来が楽しみだ」  シモン先輩の言葉を聞いて、レオンは俯いていた顔をあげた。 …まぁ、レオンは平民出身と言うことでかなり苦労しているしな。 「レオン、こう言ってくれる方だって貴族にはいるんだぞ。俺がレオンの後ろ盾になるから、後はうるさい周りにお前の才能を見せつけてやればいいんだ。遠慮なくな!」 「おや、未来の騎士団長が後ろ盾かい? それは頼もしいね」  シモン先輩はニコニコと笑いながらも、少し時間を気にする素振りを見せた。 「あ…シモン先輩、足を止めさせてしまい…」 「あぁ、いや、いいんだ。気を遣わせて悪いね。この後、妹との約束があるんだ。まだ時間には余裕があるから、手土産にスイーツでもと思っていてね」 「妹ってもしかして、『ディアナ姫』…?」  緊張しっぱなしのレオンが、やけにハッキリと言葉を発した。
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