第12話(2) 甘い夢

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第12話(2) 甘い夢

「シェリー」  震える声でそう呼べば、彼女は優しい瞳で俺を見下ろす。 「貴女が好きです。そして、」  彼女の瞳の中の俺は不安げで、けれど、何かを期待しているような表情だ。  彼女はうっとりとした顔で俺を見つめ、期待感に星空の瞳を輝かせている。  その瞳の中に流れ星は落ちないだろうかと、つい探してしまう。絶対に叶えたい願いがあるんだ。どうか、どうか…。 「俺は、平民です」  いつか貴女に相応しい自分になるから待っていてほしい…そう続けようとして、気付いた。  熱に浮かされた頭に大量の冷水をかけられたような気分だ。  …そうか、彼女は知らなかったのか。  平民だと聞いた彼女の表情が強張っていく様を見て、俺はやっと甘い夢から目が覚める。
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