第12話(3) お嬢様の結論

2/3
前へ
/320ページ
次へ
「お嬢様? 平民になればいいとは何の話ですか!?」  突然後ろから声をかけられて驚いた。  振り返れば、息を切らし肩で呼吸するソフィが立っていた。どうやら、走って追いかけて来てくれたみたい。 「ソフィ!」  私はにっこりと笑って、レオンと想いが通じ合ったこと、レオンが平民だったこと、そしてもしお父様に結婚を反対されたら平民になる決意を固めたことを伝えた。 「お、お、お嬢様が、平民に!?」  ソフィは未だかつてないほどに目を見開いて、愕然とした表情で私を見ている。薄らと顔色も悪くなった気がする。 「だ! だめです! そんなの! お嬢様はお嬢様でいてください!」 「なぜなの、ソフィ? レオンと一緒にいるためには、何かを諦めないといけないかもしれない。それが貴族としての地位なのであれば、私は喜んでその地位を捨てるわ!」  ソフィは泣きそうな顔で、両手を祈るように組む。私を見つめながら切実に訴えた。 「仮にお嬢様が平民になられたら、もうナイトベル公爵家の敷居を跨ぐことは叶いません。旦那様や奥様、シモン様にも会えなくなるのですよ? それでもいいのですか…?」 「え…」  家族に会えなくなる? 考えてもみなかった。 「そ、そんな会えなくなるだなんて…」 「…余程の大富豪ではない限り…一介の平民が公爵閣下にお目通りする事など、天と地がひっくり返った時くらいにしか起こり得ません」  私は思わず口を噤んだ。  天と地がひっくり返った時って…絶対にあり得ないって事じゃない!
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加