第2話(1) 嵐の前のとある午後1

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「ん?『ディアナ姫』?」 「あ! いや、その…なんでもないです…!」  と、思えば顔を真っ赤にしてまた顔を俯く。 「『月の女神』かぁ。うん、いいねぇ。シャロンにぴったりの、美しい渾名だよ。一年生の中では、そう呼ばれているの?」 「……俺が、心の中で勝手にそう呼んでいて…すみません!」  …レオン、やらかしたな。これは恥ずかしいぞ。 「はははっ、君は素直だね。レオンは、将来騎士になるんだろう? 王立学園の騎士学部と言えば、卒業後は王宮勤めが大多数。…未来の国母である妹のこと、守ってあげてね」 「…は、はい! 全身全霊をかけて、この身が滅ぶまで!」 「ふふふ、ありがとう。では最後にレオンにいい店を教えてあげよう。貴族向けの店ではあるが、他店とは違い検品段階で問題があったものなどを安価で販売している。もちろん、商品の見た目を気にしない者が使う分には問題のない品質だ。シャロンに素敵な渾名を付けてくれたお礼だよ」  シモン先輩には珍しく、悪戯な笑顔を向けて「店の名前は『ナイトジャスミン』だよ」と、言い残し去っていった。
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