第13話(1) ロマンス小説の法則

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第13話(1) ロマンス小説の法則

 レオンと想いを通じ合わせて3日。レオンの瞳と同じ色のブローチを身に着け続けるほど浮かれていた私は未だに彼と会話ひとつ交わすこともかなわないでいた。  原因はひとつ。 「あ! レオ…ン……」  私の姿を見るなり、彼はそそくさとその場から逃げていくのだ。騎士学部のエリアでレオンを見かけたから、挨拶をしようと小さく手をあげた姿のまま残される私。両隣には気まずそうにこちらを伺うソフィとエリック様がいた。 「………気のせいではないわよね」 「…お嬢様?」 「私、もしかして、レオンに避けらている!?」 「今頃気付いたのですか、お嬢様!」  ソフィはまるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして、私を見つめる。 「…シャロン、非常に言いづらいが…君たちは本当に想いを通じ合わせたのか?」  私の大切な友人2人に早速レオンとのことを報告したのが2日前。現状を考えると、まるで私の妄想癖ゆえの虚言のように思う。なるほど。エリック様の指摘にも納得だ。  私は絶望感に目を潤ませ、エリック様を見上げる。するとエリック様は頬を少し赤らめ「うっ…」と、言葉を詰まらせていた。 「……私の、勘違いだったのかしら…」 「お嬢様…」 「レオンは、もしかしたらそんな気はなくて…勘違いした私のことが鬱陶しくなってきたんじゃ…」 「い、いや! それはないと思うぞ」  エリック様は強く反対され、私に「何かすれ違いがあるのでは? そう気を落とすな」と慰めてくれた。  優しい。優しさが五臓六腑に沁み渡るわ…。
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