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「イーサン、何をしているの!」
ギュッと目を閉じて心で祈った時、厳しく殿下を咎める声がした。
「……ハリス、か。久しいな」
ゆっくりと目を開ければ、息を切らしながらこちらへ駆けてくるハリス様の姿。…その後ろに、この場を立ち去っていた筈のレオンの姿もあった。
「騒ぎを聞きつけて来てみれば…シャロン嬢、大丈夫?」
白けたような表情の殿下から私を引き剥がしたハリス様は、優しい声色で私の安否を確認する。私は涙目に小さく何度か頷きソフィの元へと戻った。
「裏切り者までやって来るとは…まあいい。シャロン、続きはまた今度」
イーサン殿下はそう言い残し、立ち去っていった。
ハリス様が、裏切り者…? ハリス様を見れば、感情を押し殺したような無表情。
「…ハリス、助かった。俺ではイーサンを抑えられなくて…」
「いや、僕こそ遅くなってごめん。…レオン君がこの騒ぎを教えてくれてね、急いで駆けつけたつもりなんだけど…遅かったね」
エリック様が声をかけると、ハリス様は自信なさげな笑顔を浮かべて肩をすくめる。レオンがハリス様を…。私は先程レオンがいた場所に目を向けるが、そこに彼の姿はなかった。
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