第2話(1) 嵐の前のとある午後1

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 レオンは真っ赤な顔で終始狼狽えていたが、少し経つと落ち着きを取り戻してきたみたいでいつものクールなレオンに戻っていた。 「…やけに緊張してたな?」 「……あまりにも似ていたので、驚いて…」 「『ディアナ姫』に?」 「…先輩!」  ニッと笑って揶揄うと、レオンが凄んできた。シモン先輩との反応の差な。  シャロン嬢か…。シモン先輩は暖かい雰囲気があるが、シャロン嬢はなんというか、冷たい雰囲気だ。底冷えする冬夜の女神って感じ。まぁ、悪い人ではないんだろうけど。友人もいるし、いつも一緒にいるメイドを大切にしているみたいだし。…でも俺は、正直苦手だ。 「…未来の国母だからな。憧れだけで済ませておけよ」 「分かっています。手を伸ばしてはいけない月だと、俺はちゃんと分かっていますから。そもそも身分が違いすぎて…俺にとって彼女は偶像のような方なんです」  …そうだよな。身分もそうだが、この国の男だったらそもそも王太子の婚約者に、期待なんて抱けないよな。
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