第13話(3) 迫りくる恐怖追体験

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第13話(3) 迫りくる恐怖追体験

 翌日、寝ぼけ眼で目が覚めると、薄暗い室内に腕いっぱいに薔薇の花束を抱えたソフィが立っていた。  朝日が漏れるカーテンの向こう側では、鳥たちが機嫌良さそうに歌っている。 「ソフィ? そんなところで何を…その花束は…?」 「……イーサン殿下より、お嬢様への贈り物でございます」  一気に目が醒める。  真っ赤な薔薇の花束を携えて無表情なソフィに、私もまた自然と無表情になってしまう。 「…………棄てて」 「かしこまりました」  これが今朝の出来事。 「…このアフタヌーンティーセットは?」 「……イーサン殿下より、お嬢様への贈り物でございます」  私がよく愛用している庭園の東屋にセットされたお菓子の数々。輝かんばかりに着飾ったケーキ達は、あきらかにこの学園のシェフが用意したものではない。おそらく、王宮お抱えのパティシエだろう…。 「…棄ててと言いたいところだけれど、このお菓子たちに罪はないわ。エリック様とルーカス様をお呼びしてお茶会を開きましょう」 「かしこまりました」  これが昼時の出来事。 「シャロン、私からのプレゼントには満足してもらえたかな?」  これが放課後、現在の出来事。  帰り支度をしていると、突然教室に殿下が現れたのだ。  私は顔面蒼白。昨日の悪夢はまだ続いているのだと悟った私は、鞄やら何もかもを放って教室から逃げ出した。
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