第13話(3) 迫りくる恐怖追体験

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「な、なぜ…!」  撒いたはずなのに! 「最近体を動かしていなかったから、中々に楽しかったよ」  と、笑う殿下を忌々しげに見つめて、私は意を決して殿下に尋ねてみることにする。この際だから、しっかりと向き合い話し合おう。 「なぜあのような…婚約を結び直したいなどと仰るのですか?」 「うん? 昨日伝えたはずだが。…やはり私の伴侶は君しかいないと気付いたのだ」 「……リリス嬢のことはもういいのですか?」 「………」  殿下は何も答えない。その代わり、まるで私を蔑むかのような視線を一瞬だけだが向けてきた。すぐにいつもの笑顔を浮かべるが、私は見逃さない。 「殿下が真に愛するお方は私ではないはず…そうでしょう? 私の事は、もう放っておいて下さいませんか」  私が冷たくあしらうと、殿下は笑顔のまま、けれど彼の魔力がザワザワと騒がしくなる。  なに…なんなの…? 殿下は私に一体、何を求めているの?
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