第13話(3) 迫りくる恐怖追体験

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「……私には、君が必要なんだ」 「いいえ、殿下に私は必要ありません」  殿下は笑顔を貼り付けたまま、私を見据えた。その青い瞳は、いつかみたセドリック王子の青い瞳を思い出させるほど濁っていた。 「いいや、絶対に必要なんだ。シャロン、君がいれば私の立場は揺るぎないものになる」 「…? 意味がよく…」  分からない、と続くところで私は異変に気付く。こ、呼吸が…出来ない…!  私は今、どうやら殿下に攻撃を受けているらしい。私は殿下よりも魔力量も少なく技術もない。格上の相手に抗えるはずもなく…。  自身の喉に手を添えて、ハクハクと鯉のように口を動かす私を殿下は静かに眺めていた。 「君の答えは、イエス。そうだろう?」  輝かしい笑顔から一転、含みある笑顔で私を抱き寄せるイーサン殿下。私は必死に首を横に動かして、同意しない意を示す。 「…うん? まあ、別にいいよ。君が苦しむだけだ。私はここで気長に待つことにしよう」
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