第13話(4) イーサン・デイル・サンロード

1/6
前へ
/320ページ
次へ

第13話(4) イーサン・デイル・サンロード

 意識を手放しそうになった時、私が唯一求める声で「シェリー」と呼ばれた気がした。そして、激しい嵐のような荒風が巻き起こったかと思うと、私の身体は殿下の手から離れふわりと宙に浮き、そしてまた誰かに抱きとめられる。 「…リー…」  誰? 私をそう呼べるのは、ただ一人にしか許していないの…。 「シェリー! 大丈夫か!?」  ! この声はレオンだ。私の意識は浮上してハッと目を覚ます。  途端に堰き止めらていた空気が私の肺に一気に流れこんできて、ひどくむせてしまった。 「シェリー! ああ、良かった!」  視界いっぱいに、今にも泣き出しそうな情けない顔。黄金の瞳に映る私は、安心したような顔で微笑んでいた。 「レオン、来てくれたのね…」  レオンが助けに来てくれた。それだけで、こんなにも安心してしまうのは何故だろう?  力無く微笑む私を見て、ひどく傷付いた顔をしたレオンはギュッと抱きしめてくれた。  レオンの激しく奏でる心音が私にまで伝わってくる。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加