第13話(4) イーサン・デイル・サンロード

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「………君は誰だ?」  私とレオンから少し離れたところに立つイーサン殿下はとても不機嫌そうにこちらを見ている。 「…レオン・タランです」  レオンの腕の中にいる私から顔をあげて、前に立つイーサン殿下を見据える彼。その眼光は鋭利な刃物のように鋭く、殿下を敵と見做す視線であった。 「『タラン』? …そうか、お前があの平民の…」  殿下はそこまで言葉を紡ぐと、その綺麗なお顔立ちを鬼の形相のように歪めレオンを睨みつけた。 「平民の分際で、王太子である俺に牙を向けたな!」 「シェリーを救うためです」  殿下の威圧にも平然とした態度で言ってのけるレオン。殿下は『シェリー』にピクリと反応して、まさか、といった様子で歪んだ顔にぎこちなく笑みを浮かべた。 「…その金の瞳…まさか、平民のお前がシャロンのブローチの人だと言うのか? 私ではなく?」  レオンは何も答えない。  そして、殿下からひと時も目を離すことはなかった。レオンは警戒しているのだ。明らかに様子のおかしいイーサン殿下。何を仕出かすのか誰にも分からないと思わせるほどに、今の殿下は不安定だった。 「ふふ…ははっ、あははは!」  殿下は今までに見せたことのない異様な雰囲気を身にまとい、何が面白いのか大笑いしだした。 「…いいよ、シャロン。一度は許そう。私も過ちを犯したのだから、お互い様だ。さ、私の元へ戻っておいで」  そして、美の女神すらも見惚れるかのような美しい笑顔で私に手を差し伸べてきたイーサン殿下。  こんなにも美しい方なのに…なぜ、こんなにも恐ろしく感じるの。殿下の奥底で、一体何が蠢いていると言うの…?
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