第13話(4) イーサン・デイル・サンロード

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「…イーサン・デイル・サンロード王子」  何かの上等な紙面を手に、ヴァネッサン伯爵はよく通る声で殿下の名を読み上げる。 「……いやだ。待て、待ってくれ、まだ私にはシャロンがいる! シャロンさえ手に入れば! 手に入れば!」  エデルナンド侯爵に抑えられながらも、殿下は透き通るような青い瞳を見開いて私を見る。 「シャロン! 結婚しよう! 君が好きだ! 私には君が必要なんだ!」 「ひっ…!」  血走る瞳で見つめられ、嘘で塗り固められた愛の告白に私は怯えた。思わずレオンの胸元に抱きついてしまう。レオンもまた、私の肩を抱く手に僅かに力が入った。 「…見苦しいぞ、イーサン。よい、続けろ」 「父上! あんまりです! 私は、私は…ただリリスと、恋をしただけだというのに!」  悲痛の叫びをあげる殿下にはお構いなしに、ヴァネッサン伯爵は無情にも紙面の内容を読み上げた。 「イーサン・デイル・サンロード王子。本日を以て、王太子としての身分を廃嫡することとする」
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