第13.5話(1) 敗北の騎士

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第13.5話(1) 敗北の騎士

「燃え尽きてるねぇ」  剣技大会の優勝者も決まり、選手も殆ど帰路についた時刻。俺は選手控え室で何もする気力が起きず、片付けることなくベンチに腰かけて窓から見える快晴の空をぼんやりと眺めていると、ふいにそんな言葉が耳に飛び込んできた。  目を向けるとシモン先輩が立っていた。 「…試合で疲れただけです」 「おや? エリックにしては珍しく素直じゃないね」  クスリと笑いながらシモン先輩が近付いてきた。俺は一人になりたいと言う気持ちから、視線を再び窓の外に向ける。正直、放っておいて欲しかった。 「シモン先輩、どうしたんです? 皆、もう帰っている時間ですよ」  だから、空に浮かぶ雲を眺めながら素っ気なく早く帰ってくれとそう伝えると、シモン先輩はゆっくりと歩き俺の目の前に立つ。そして優しい声で「少し野暮用があってね」と答えた。俺は思わず、シモン先輩を見る。 「野暮用…まさか、俺のことじゃないでしょうね?」 「男が男を慰めに行くなんて、野暮以外になんだというんだい?」  シャロンと同じ星空の瞳と視線を交わし、俺は小さく息を吐いた。  …ああ、この人はこういう人だよなぁ。
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