第13.5話(1) 敗北の騎士

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「…試合に負けたことが、そんなに堪えたのかな?」  試合に負けた…から、こんなに気持ちが沈んでいるのだろうか。いや、違うな。 「……敵わない、と、思ってしまったからだと思います」  俺は試合に負けたことよりも、レオンに敵わないと思ってしまった事に、とても悔しいと感じたんだ。騎士としても、男としても。 「レオンという大きなライバルが出来てしまったね、エリック。良かったじゃないか、君の未熟さに気付くきっかけとなった。まあ、世の中はそう甘くないってことさ」 「……シモン先輩は、俺を慰めに来てくれたんですよね?」  もっと優しい言葉をかけてくれてもいいのでは? と、しかめ面で文句を言う俺を見て、とても可笑しそうに笑っているシモン先輩。  そして、ゆっくりと上げた手を優しく俺の頭においたのだ。 「…なんです、これ?」 「よく頑張った。いいこ、いいこ」  女神の微笑みのようなキラースマイルを浮かべて俺の頭を撫でるシモン先輩。 「やめてください」 「何故だい? 私とシャロンは見た目が似ているから喜ぶと思ったんだけれど…違いなんて性別が違うくらいさ」 「性別の違いは大きいです!」 「あはは!」  あまりのふざけ具合に少し呆れたが、なるほど。確かに先程までの憂鬱な気分がいつの間にか霧散している。  一人にして欲しいと鬱陶しく感じていたはずなのに、今では少しだけだが、シモン先輩の優しさに感謝した。  …だが、頭からは手を退けて頂く。俺はシモン先輩の手を払った。
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