第13.5話(1) 敗北の騎士

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「はあー……負けた」 「負けたね、盛大に」 「シャロンもレオンが好きだし」 「そうだね。人生初の恋に浮かれまくっていたよ」 「2人は互いに想い合ってるんだよな…」 「君たちの試合が終わった直後に、妹はレオンに会いに行ったみたいだよ」 「………」 「ん? どうしたんだい? そんな怒ったような顔をして」 「だから、慰めに来たんですよね!? 俺の傷心に塩を塗ってどうするんです!」 「あはは、エリック、元気になったね」 「ですね! 貴方のおかげで!」  まったく、この人は! 憎たらしいよ、本当に。 「…シャロンを諦めろと言わないんですか?」  俺はそう言って、目の前に立つシモン先輩を見上げる。質問を受けたシモン先輩はニコリと笑い言った。 「終わりなんてものは、君が拳を下げた時だけ。そうだろう?」  なんて人だ。  想い人の兄に諦めろと言われた方が、この気持ちに終止符を打つ理由になるのに。シモン先輩は理由を与えてはくれなかった。 「…なんて優しくない人なんだ」  俺がそう言うと、シモン先輩は晴れやかな笑顔を浮かべ「光栄だよ」と言う。相変わらずのシモン先輩に、俺たちは互いに顔を見合わせて笑いあった。
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