第13.5話(1) 敗北の騎士

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「これからもシャロンの側に居たいと思います」  『恋人』ではないのかもしれないけれど、それでも近くで彼女を見守っていきたい。俺の今の素直な気持ちだ。それに…。 「王宮の動きがシャロンに影響を与えないか心配ですし」 「…エリック。その事についてだけれど、くれぐれも妹を頼むね」 「はい…。ハリスも力になってくれていますし、学園であればイーサンが何か企んでいてもシャロンを守れるかと思います。ヴァネッサン伯爵の助言を受け最悪の場合も考えて、王宮と学園の転送ポータルの使用許可も申請しています」 「ありがとう」  シモン先輩は眉を下げて安堵したように笑った。…本当、シャロンには激甘だよな、この人。 「…やはり、セドリック王子が?」 「今日、陛下は隣にセドリック王子を付き添わせた。そういうことだろうね」  …イーサンは今、何を思っているのだろうか…。 「エリック、君には複雑な思いをさせるのかもしれないが、私でもイーサン王子ではなく、セドリック王子を選ぶよ」 「…そう、ですね。仕方がないことだと分かっています。でも…昔からイーサンの側にいたから分かる。今のイーサンは変わってしまった。確かに世間知らずではありましたが、あんなに愚かな男ではありませんでした」 「………」 「ちょうど春から…それこそ、リリスと出会ってから……すみません、聞かなかったことにして貰えますか?」 「……うん、分かっているよ」  この時、シモン先輩がどのような表情をしていたのか、俺は見ていなかった。
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