第13.5話(2) 主人公

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 そもそも、私が謹慎させられるなんて…こんな状況に陥るストーリーがあるなんて聞いてない。  イーサンとの『秘密のキス』イベントまでは順調だったのに。なんでこんなことになったんだっけ?  私はそこまで考えて、あの憎たらしい悪役令嬢の顔を思い浮かべた。 「やっぱりシャロンって、『転生者』だよね?」  私は確信している。  だって、そうじゃなきゃこんな事にならない! それに、聞いてた性格と全然違う! 「ふん! 脇役の、しかも悪役の分際でこの私の邪魔をするなんて! 『嫌われキャラ』のくせに! 何を運命に抗ってんのってかんじ! しかも何気に私の立ち位置狙ってるよね、あの女。 貴女じゃどう足掻いても無理! 私に勝てるわけないから!」  最後に勝つのは決まって正義。ヒロインの私こそが正義でしょ。つまり、最後は絶対に私が幸せになるの。私を中心に廻るこの世界ではそうなるって決まっているんだから! そうでしょ、ママ?  そんな事を考えて高笑いしていると、部屋の扉のドアを3回叩くノック音がした。あ、この回数は…。 「はい、どうぞ」  可憐な声でそう答えれば、扉が開き顔を覗かせたのはやはり思った通りの人。 「ラザークくん! イーサンくんの手紙を持ってきてくれたの? いつも有難う!」  私は必殺、天真爛漫風の愛くるしい笑顔をラザークに向ければいつもは顔を赤らめ照れる様子を見せる彼なのに、今日は何故か曇った表情を浮かべていた。
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