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去っていくレオンの後ろ姿を見送っていると、聞き慣れた声が背中から聞こえてきた。
「エリック!」
「ハリス! と、ラザークまで。どうしたんだ?」
名前を呼ばれ振り返ると、国王の信頼が厚い側近の息子である同級生のハリスと、今年入学してきた宰相の息子であるラザークが立っていた。
ハリスとラザークと現騎士団長の息子である俺は、親の仕事柄もあって子供の頃からイーサンの将来の臣下として一緒に育ってきた仲だ。長い付き合いである。
「探したよ、エリック」
「?」
「エリック先輩。よく分かりませんが、私たちシャロン嬢に呼び出されていて…」
「え、俺も?」
「そう。午前の授業が終えた時にシャロン嬢の専属メイドから言伝があったんだ。すぐにエリックの元に向かったんだけどね…」
ハリスはそう言って、赤毛をかき上げると少し不機嫌そうに顔を顰めた。
「悪い。騎士学部は全体演習で早めに終わったから、レオンと昼メシを食べに出てた」
「まぁ、いいけど。それにしても、いくら優秀とはいえ平民と馴れ合うのはどうなの? エリックの品位を疑われるよ?」
またコイツは。ハリスの何事もはっきりとした性格は嫌いではないが、家格や地位、能力などで優劣をつけたがる悪癖がどうも気に入らない。
「ハリス、俺がそう言うの嫌いだって知ってるだろう?」
「…ま、エリックの好きにしたらいいさ」
ハリスは悪びれもなく鼻で笑って生意気な態度で腕を組んだ。喧嘩なら買うぞとでも言うように。
「と、とにかく! シャロン嬢の元へ向かいませんか?」
気まずそうに、眼鏡をかけ直しながらラザークが言う。俺とハリスはとりあえず矛を収めて、シャロン嬢の待つ店へと向かった。
そう言えば、シモン先輩もシャロン嬢と約束していたよな…?
俺たちまで呼び出されるって、何ごと?
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