第13.5話(2) 主人公

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 苛々が収まらない中、ラザークが落として行ったであろう見慣れない紙面が一枚カーペットの上に落ちていた。  私はそれを拾って文章に目を通し、ニンマリと笑う。 「…そっか、そっか。新学期からやっと私の謹慎が解除されるのね! 良かった!」  じゃあ、作戦を練らないと。  もう王太子じゃないイーサンは使えない駒だし、ラザークは役立たずな駒だから、エリックとハリスを使うかな? うーん、まだあの駒たちは使えるのかなぁ。  ふと、まだスイートラバー子爵(パパ)に引き取られる前にママに手を引かれてとある大きな館の近くに行った時のことを思い出した。  私はまだ7歳でよく分からなかったけれど、ママがこのお屋敷にはお姫様が住んでいると教えてくれた。銀の神と星空の瞳を持った私と同じくらいの女の子を屋敷の中に見かけて、お姫様というより、女神様みたい、だなんてその時は思ったの。  そしてその屋敷で、私は私の運命の人を見つけた。 「…私と運命の人の未来のために、やっぱりシャロンをどうにかしないと。私のために死んで貰おうっと!」  私はるんるん気分で、開いていた教材をパタンと閉じる。  待っててね、私が世界で一番愛する運命の人。貴方と結ばれるために、私、『イーサンルート』を頑張ったの!  『幽閉の塔でシャロンが自殺する』、この『イベント』を終えてはじめて、『隠しキャラのストーリー』が始まるんだよねぇ。  その為には『イーサンの好感度マックス愛』と『ナイトベル公爵家の崩壊』、そして『シャロンの死』が絶対条件なの。じゃないと私と運命の人のラブストーリーは始まらない。 「シモン様ぁ…。リリスは、貴方に会える日が待ち遠しくて仕方ありません!」
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