第14話(1) お嬢様と王太子

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第14話(1) お嬢様と王太子

 イーサン殿下が王太子としての身分を廃嫡された。  ヴァネッサン伯爵閣下の言葉を聞き、私が不安気に殿下に目を向けると、殿下は呆然とした様子。エデルナンド侯爵が抑えずとも、力無く静かにその場に両膝を地につけて項垂れていた。 「…イーサン、しばらく隣国へ留学に行きなさい。そこで他の世界を見て見聞を広げなさい。多くを学び知識を身につけなさい」  そう告げる陛下の声はとても優しく、我が子を思いやる気持ちが痛いほど伝わってきた。  けれど、来年18の歳を迎えるイーサン殿下にとって、陛下のお言葉は今後一切、王太子即位が叶うことはないという通達でもあった。 「………何故こんなことに? いつから間違いを犯していたのだ? 父上も私に期待していてくれたのに、何故今ではそのように憐れむような目を向けるのですか? ハリスもエリックもずっと側にいてくれたのに、何故今では私の側にいてくれない? 何故、このようなことが起こった? なぜ? 原因は…?」  そう絶望の句を紡ぐイーサン殿下とふと目が合う。その瞬間、ヒヤリと背中に悪寒が走った。 「…シャロン…そうか、シャロン。君が(はか)ったことだな? 私とリリスが愛し合う様を見て嫉妬に駆られた君が私を貶めたのだな! 友も地位も、私の大事なものを全て奪って! このような形で私に復讐を果たすとは、見事だよ…なんて計算高く、底意地の悪い女なんだ!」  鬼の形相をした殿下から、ぶわりと青い魔力が噴き出てきた。エデルナンド侯爵が殿下の魔力を抑え込もうとするも、殿下の怒りが勝ったようで青い魔力が私を目掛けて飛びかかってくる。
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