第14話(1) お嬢様と王太子

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 なんなの? エリック様のお話も気になるし…。 「シャロン」  レオンとハリス様から少し離れたところで足を止めたエリック様がこちらを振り返り私の名を呼んだ。  向こうではソワソワとした様子のレオンと、楽し気に笑っているハリス様。どうやら私たちの会話は聞こえていないみたい。  エリック様は何となく顔を赤らめているようで、熱でもあるのかしら? と心配していると、エリック様が緊張した面持ちで口を開く。 「シャロン、君のことが好きだ」  まさか。そんな事をエリック様から告げられるとは夢にも思わなかった私は、驚きながらも口が勝手に答えてしまう。 「…ごめんなさい」  もう、レオン以外の殿方を愛している自分が想像つかないほどに、私は彼に夢中なのです。 「答えは分かっていた。俺は、俺のけじめの為に伝えたかった」  エリック様は困ったように笑って、静かに俯いてしまった。 「…君の幸せを願っているよ」  そして、顔を上げたかと思うと真剣な面持ちにその爽やかな緑の瞳で私の姿を映す。  エリック様の優しさに触れて、私は笑顔を浮かべる。ありがとうと言う感謝の気持ちを込めて、笑った。 「…さあ、レオンの元へ戻れ。不安なアイツは、今ならきっとシャロンの話を聞きたいだろうさ」  悲しそうに、けれど愛しむような眼差しで私を見つめるエリック様は私の背を押してレオンの元へ送り出す。  私は一瞬、エリック様に目を向けたが、一歩踏み出したところでレオンだけを見つめて駆け出した。
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