第14話(3) 君は世間知らずなお嬢様

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「……でも、俺は平民で…」 「私、きっと平民の暮らしに慣れてみせるから」 「………はい?」  思わず、といった様子で遂にレオンがこちらを振り返った。 「針仕事でもなんでも、貴方と一緒にいられるならどんな事でもしようって思えるくらいレオンが好き! 例え、家族に会えないのは…確かに辛いけれど…陰ながら安寧を願っているし、大好きなロマンス小説が読めなくなっても…レオンと歩む人生を選ぶわ」  情けなくも上擦った声で私は続ける。 「こんなにも私の世界を、見えるものも聞こえるもの全てを貴方が変えていったくせに! 今更私を手放すなんて許さないわ!」  顔を真っ赤にしながら想いを告げる私に、レオンは何故か泣きそうな表情を浮かべていた。 「シェリー…まさか貴女が平民になると言い出すなんて思わなかった」  レオンは黄金の瞳を揺らしてゆっくりとこちらへ歩み寄り、そしてぎこちなくもしっかりと私を抱きしめる。 「…私と一緒にいてくれる?」 「俺で良ければ、貴女が望む限り」  そう言って抱擁から私を解放するレオン。その顔は甘くとろけるような笑顔だった。
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