第14話(3) 君は世間知らずなお嬢様

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「…ところで、ロマンス小説が読めないって言うのは、どういうことだ?」  ひとしきり私を抱きかかえてクルクルと回ったレオンは満足したのか、私を地に下ろしそんな質問をしてきた。 「ソフィに聞いたの。本は高価だから、平民での生活水準だと購入する事は難しいって…」 「いや…普通に買えるよ。平民の女性の中でロマンス小説やゴシップ記事について語り合う婦人会なんて会合が開かれているくらいには、嗜まれているよ」 「え! でもソフィが…じゃあ、公爵家の家族に会えないと言うのは?」 「…確かに、そんな頻繁にお目通りは叶わないかもしれないけど…全く会えないって訳でもないと思うけどなぁ…」 「………じゃ、じゃあ、クッキーなんて食べられないって言われたのだけれど…」 「クッキー? 一般家庭で親しまれているお菓子だね。砂糖は確かに高いけれど、手が出ないわけでもないし。俺の母さんはよく焼いてくれるけど…」 「……レオン、貴方は野菜の皮を食べて育った?」 「ええ? 戦争でもないのにそんな極貧生活を送る家庭なんて、今のこの国にはそうそう居ないよ」  驚く私を見て、レオンがクスリと笑う。 「世間知らずのシェリーが平民にだなんて、ソフィさんはすごく心配したんだろうな」 「じゃあ、私…ソフィに…!」 「試されたみたいだね」 「…そ、ソフィー!」  私は恥ずかしさから顔を染め上げて、この場にいないソフィの名前を思いっきり呼んだ。
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