第15話(1) エデルナンド侯爵領

2/5
前へ
/320ページ
次へ
「シモン先輩、シャロン、お久しぶりです」  王都から比較的に近いエデルナンド侯爵家に着くと、エリックが出迎えてくれた。  長期休暇に入って2週間。久しぶりに見るエリックは、また逞しくなったように思う。 「…と、申し訳ありません。公爵閣下、公爵夫人。ご挨拶が遅れました。ようこそ、エデルナンド領へ」  久しぶりに親しい友人に会えて嬉しいからか、エリックは父上と母上を差し置いて先に私とシャロンに挨拶をしてしまった事に気まずそうな顔を浮かべていた。  …まだまだエリックは次期当主としての自覚が足りないらしい。数ヶ月後の卒業式を迎えれば、エリックもエデルナンド小侯爵だというのに。大丈夫かな? 「やあ、エリック。君ももう卒業する年になるのか。いやはや、大きくなったな」 「は、はは…」  ほら、父上は見逃してくれないぞ。  小侯爵としての自覚が足りないとつつかれたエリックはタジタジといった様子でぎこちなく笑っている。父上は揶揄うように意地悪な笑みを浮かべて楽しそうだ。母上もシャロンも可笑しそうにクスクスと笑っていて、なんだか平和だなぁ、なんてほっと心が温かくなる。 「ナイトベル公爵閣下、公爵夫人。愚息が申し訳ない。ご覧の通り、身体ばかりが大きくなるもので、私も困っているのだ」  そこに現れた新たな人物はエデルナンド侯爵だった。エリックと同じ緑の瞳にエリックを数十年歳をとらせたようなその人。つまり、エリックは父親似だということだ。ただ違いは、爽やかなエリックとは違いエデルナンド侯爵は常に厳しい表情を浮かべる冗談など通じなさそうな人物である。 「ようこそ、エデルナンド侯爵領へ。貴方がたに我が領地へお越し頂き、とても光栄に思う」  堅物そうな表情に笑みを携える侯爵閣下。私たちはエデルナンド侯爵閣下の歓迎を慎みながらも受け取った。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加