第15話(1) エデルナンド侯爵領

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「さて、帰省に伴い護衛を…と、エリックから伺っている。私の子弟で良ければ紹介しよう。ここではなんだから、屋敷で寛いでいてくれ」  席を外したエデルナンド侯爵に代わりエリックに案内され、私たちは大きな窓からエデルナンド侯爵邸の庭園が一望できる応接間に通された。  秋らしく落ち着いた色合いの花々が咲き乱れる風景が、まるで一つの大きな絵画のよう。見事、この一言に尽きる。季節によりこの風景画が変わるのか。ふむ、エデルナンド侯爵夫人はとてもセンスがいい。  夫人の仕事に屋敷の管理も含まれている。このように客人に満足して貰えるかどうかは、その屋敷の夫人の手にかかっているのだ。 「素敵…まるで絵画のよう。このように散策以外でも庭園を楽しめるなんて、とても新鮮だわ」  母上も満足そうに手を頬に添えてうっとりとしている。シャロンも目を輝かせていた。 「満足頂けたようで光栄ですわ。ようこそ、エデルナンド侯爵家へ。歓迎いたします」  私たちが窓の景色に釘付けになっていると、エデルナンド侯爵夫人が嬉しそうな笑みを浮かべてやって来た。  侯爵夫人は貴婦人には珍しく襟元で揃えられた短い髪、凛とした表情の背の高い女性だ。  元々は騎士として王宮に勤めていたのもあり、カラッとした性格にハキハキとした受け答えをするような女性で、私としては会話をしていて何とも気持ちの良い人物である。エデルナンド侯爵とは職場恋愛の末、結婚に至ったと聞いたことがある。 「ええ、ええ! とても素敵だと感心しておりました!」  母上はすぐさまエデルナンド侯爵夫人に飛びつき、会話に花を咲かせている。やれやれ、母上はお喋りが大好きだからな…こうなると、長いんだ。ふと父上と目が合った。父上も私と同じことを考えていたのか、肩をすくめて笑っていた。
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