第15話(1) エデルナンド侯爵領

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「エデルナンド侯爵。どうやら一名、顔ぶれが足りないようですが…」  私が侯爵にそう伝えると、侯爵は少し気まずそうな表情を浮かべた。侯爵夫人が「まあ、あなた。出し惜しみしているの?」と笑っている。 「………入ってきなさい」  観念したのか、渋々といった様子で扉の向こうで待機している誰かに声をかけるエデルナンド侯爵。「父上はこの長期休暇でアイツをみっちりとしごきたかったらしいんです」とエリックがこっそり耳打ちしてきている間に、扉が静かに開いた。そこにあった顔は…。 「え……」  シャロンは目を丸くして固まっていた。 「…では、私の護衛騎士はレオンにしようかな?」  私はそう言って、今しがた部屋に入ってきたレオン・タランに微笑んだ。 「ま、ま、待ってお兄様!」  ふふふ、慌ててるなぁ。 「や、やっぱり私、護衛は…ルーカス様でなくて、レオンがいいわ!」 「ええ!?」  即断するシャロンの隣で、ショックを受けた様子の剣技大会3位の男。ルーカス、今の顔、本当に面白いよ。 「振られちゃったね、ルーカス。そんな君を私が貰ってあげよう」  私がクスクスと笑いながらそう言うと、ルーカスはやはり緊張した顔つきで「……ご厚意、感謝いたします…」と答えていた。  シャロンの護衛騎士。私からレオンへの優勝したプレゼントさ。
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