第15話(2) 甘い匂いと小公爵

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「さ、ソフィ。行こうか」  私が満面の笑みで振り返ると、リチャードが後ろで小さく息を吐く。 「リチャード、また後でね」  すぐに前を向き直せばリチャードは慌てた様子を見せた後に愛想笑いを浮かべていた。  さすが私の専属執事。私の心情をよく読み取ってくれる。リチャードに感謝を込めてウインクすると、彼は何か言いたげな表情を浮かべていたが、深々とお辞儀して私たちを見送ったのだった。 「シモン様、庭園にはどのような用で?」  庭園に到着しソフィを連れてゆっくりと散策していると、彼女は変に思ったのか(じれ)ったそうに質問してきた。  用と言う用が無かった私は暫し思案して、「なんでも珍しい花が植えてあると聞いてね。是非見てみたいと思ったんだ」と、適当に答えた。  ソフィは疑うことなく納得している様子。  チョロい。昔、ソフィがシャロンを揶揄っては「お嬢様ったらチョロいんだから。なんてお可愛いらしいの…」と言って使っていた言葉だが、きっとこう言った場合に使う言葉なのだろう。
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