第15話(2) 甘い匂いと小公爵

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「花ですか…シモン様がご興味持たれるとは珍しいですね。では、私もお探し致しますので、大船に乗ったおつもりでお任せください!」  胸を張って得意げに笑うソフィ。チョロい。…そして、可愛い。  私よりも3つ歳上なのに…お世辞にも歳上のお姉さんに似つかわしくないその緩みっぱなしの表情と飾らない君の無邪気さがいつも私の心を癒してくれるんだ。 「ソフィが手伝ってくれるなら心強いよ」  私は穏やかな心情でソフィに微笑んだ。普通の婦女子ならば私が笑顔を向けると顔を赤らめ照れてくれるのだけど。一番に私を意識して欲しい人は、これだものな…。  私は目の前で頬を染めることなくけろりとした様子で私に微笑み返すソフィを見つめた。人生って、ままならないよなぁ。 「どんな花ですか?」 「ん? そうだね…小さくて…」  花壇に目を向けるソフィを眺めながら、どんな花にしようかなんて考える。なるべく見つけにくそうなものがいい。 「栗色…いや、オレンジ色で…」  君の髪色と同じ色の花はさすがに無さそうだし。 「とてもいい匂いがするらしいんだ」 「匂い、ですか?」 「うん。甘くていい匂い。思わず誘われてしまいそうなくらいの」  私が君にそうであるように。いつも君の姿を探してしまうほどに。そんな君に似た花があるのならば、是非見てみたい。 「…全然思いつきませんねぇ」  ソフィはううん、と唸って考えているようだ。それはそうだ。だって君と一緒にいたくて適当に言ったんだもの。そんな花があればいいな、と願いを込めてね。
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